31-3 川乗の岩場
KAWANORI
※注意:以下の但し書きをご理解の上、お読みください。
(1)グレードについて、個人的感覚により調整しています。性別、身長、リーチによって体感グレードは変わりますが、個人的なブログとしてご容赦いただいた上でご覧ください。なお、グレーディングの基準について、コラム11「グレード解析工房」で説明しています。
(2)星について、100岩では4つ星までついてますが、これもまた個人的感覚により、5つ星までつけています。星の基準については、「00 表記の読み方」で説明しています。グレードに対してこちらは、そこまでの批判は生じないでしょうが、やはり苦労して登った課題の星が下がっている場合があるかと思いますので、よくご理解の上、ご覧ください。
ヤマネの塔南東
②雪の川乗路(5.10b→5.10d)☆☆
2023/12/16 1便MOS
奥多摩最恐グレーディングの一角であり急先鋒。何度テンションしようと思ったか、諦めようと思ったかわからない。ボルトはリボルトされていたので6本くらいあったが、トポだと4本で、それだと間違いなくテンションしていたと思う(ボロかったらテンションもできないので絶体絶命か?)。ルートは世にも珍しい石灰岩の逆層で、単純な下引きが一切できない。いわゆる効かせて登るクライミングが主体で、ジリジリとせりあがっていく感覚はなかなかに新鮮だった。この点3つ星といえるが、あまりにも逆層すぎてホールドが乏しく、左右にトラバースしがちなので2つ星にした。とはいえ、生半可にトラバースしたとてガバホールドは出現せず、ボルトから離れるほどに恐怖心は増し、ほどほど迂回したらラインに復帰せざるを得ないので、一つのルートとしては十分にまとまりがある。
グレードはよくわからないがヤマネコロコロ、キャットウォークと比較して5.10dにしておいた。スラブと割り切って考えれば5.10bでも有り得なくないかもしれないが、今の自分の限界グレードとかけ離れているので正確なグレーディングは難しく、暫定的に5.10dとしておく。川乗は他のルートもリボルトでボルト追加されているようだ。本来はあってはならない禁忌であるが、このような無名星なしルートでボルト4本、しかも辛いとなると事故の発生確率は跳ね上がるだろう。それも古いボルトとなると尚更だ。あくまで個人的な意見だが、今のボルト本数で適正だと感じた。一方で、エクセレントパワーのノーハンドスラブにはボルトが必要ないとも思うし、ボルトの位置や本数は将来的に再登者の話し合いで決めても良いのではないかと思う。初登者のような特定の存在に絶対的な権利を認めると、クライミングに限らず人と人との軋轢が生じると思う。R/Xだらけのルートを量産して不人気エリアになってしまうのもどうかと思うし、逆に民主的に決定してボルトだらけにしてしまうのもどうかと思う。クライミング文化を学ぶ機会やコミュニティがあって、グレードやボルト位置を再考するような議決機関があると面白いと思う。世にある野球やサッカーのような人気スポーツはそのような体制が整っており、ルールも時代に合わせて変遷していると思う。
⑤ホカロン(5.12b)★★
1日2便×
⑦ブラックジャック(5.12a→5.12b)★★★
2022/12/04 2日5便RP
ヤマネの塔の良質な部分を抜き出した、贅沢なロングルート。このルートが23mくらいで、他のルートはこれよりも短いので、この岩場は50mロープで楽しめる。上部のテラスまでの一連のムーブが美しく、変化があって飽きさせない。左右のルート間隔が近い気がするが、一番の核心は逃げ道が無く、集中して課題に取り組める。そこからノーハンドレストを挟んで上部核心へ。下部で5.12b、上部は3級くらいなのでルートの難易度には影響しないが、なめてかかると痛い目にあう。実際、一度下部を抜けたが上部で落ちてしまった。いつも思うのは、ノーハンドレストであまりレストせず、突っ込んで落ちたのは、自分の実力不足なのだろうか。やっぱり、ギリギリで完登するのが一番充実するので、たとえオンサイトでも完全回復しないで突っ込んでしまうのだが、それで落ちるとモヤモヤする。内容は間違いなく3つ星だが、中間部のテラスまでで3つ星だと思う。どんなに課題の質が良くても、ノーハンドレストでルートが完全に分断されてしまうと、ルートとしての魅力は落ちてしまうと思う。
5.11a+3級で5.12b。出だしの5級と上部の3級は考慮していないので、限界グレードだとかなり苦労するかもしれない。
以下ムーブメモ
出だし(5級)
右手甘い穴縦ガバ、左手アンダー(左側が効く)、右足で離陸、左足をクロス気味に顕著なスタンス、右手ガバ
4ピン目から
5級
右手ガバで左面へ、左手マッチで右手縦カンテ、側対で左手縦ピンチ、側対切り返しで右手ガバ、クリップ
6級
上部の斜めガバを右手、左手マッチの後左手カチ、右手カチ、左手縦ガバ、クリップ
5級
右手ポッケカチ、左手縦ホールド(下)、右手ガバへデッド
3級
右手ガバ、左手縦ホールド(上)、左足薄いスタンス、右足下部で使ったポッケカチ、正対で核心ポケットへ右手デッド、左手甘い棚、左足カンテ上の薄すぎるスタンス、右足上げる、左手甘い棚の少し奥の溝、左手デカい岩へデッド
3級
ルーフ下コルネを左手、右手浅いアンダー、右手深い穴ガバ、左手ガバカチ、右足あげる、左足あげる、クリップ、右手縦薄カチ、左足上げて右足ステミング、左手左上のガチャガチャ、右足を左足の上のある粒スタンス、左足をあげて右足ステミング(辛い)、左手薄カチ、右手薄カチ(止まるか!?)、左手ガバポッケ、右足少しあげて右手ガバ、足を上げて右手右側のドガバ、側対で終了点ガバ
⑨ヤマネコロコロ(5.10b→5.10c)☆
2022/11/27 1便MOS
ボルトが出だしから古く、不吉な雰囲気がする。2ピン目はもっと古く錆びついており、3ピン目にかけるも常にランナウトしており全く安心できない。4ピン目でようやく落ち着ける。核心は出だしと上部の2つ。共に5級くらいだと思う。終了点は下からだと見えないが、直上していけば綺麗な終了点を発見できる。終了点以外初登時のボルトと思われる。途中、完全にレストできるので、5級が2つあるが5.10cだと思う。出だしはテクニカルで、上部は要保持力。長大なヤマネの塔を楽しめる低グレードの課題として、星1つの価値は十分ある。今回、林道が長らく閉鎖されていたこともあり、登られた形跡がほとんどなく、ボルトの古さも相まって出だしで何度もクライムダウンを繰り返し、敗退しそうになった。岩のチョーク跡含め、全くの情報なしだと、自分の限界オンサイトグレードは数字一つ下がるのではないかと感じた。5.11cがオンサイトグレードだが、5.10cで十分楽しめるどころか、全開マジトライだった。
ヤマネの塔北面
①ウッシーⅡ(5.12b)★★☆
2023/12/16 2便RP
アプローチの難易度と岩場自体の謎雰囲気でなかなか取り付けなかった課題。パートナーに恵まれ、触ることができた。取り付きにはフィックスでアプローチするので気を遣うが、RPGのラスボス(ウッシーシリーズ最後の砦ウッシーⅡ)への道のり感があって登る前からワクワクする。スタートは右の岩を使えてしまうのがやや残念。使わなくても登れるが、強度は若干あがる。そこからは見事に前傾したカンテをバシバシ登っていく。ボルダーグレードに分解できないほど切れ目なく、全てのクリップで消耗するのが素晴らしい。最後は少し簡単だが、きちんとトップアウトすることができ課題のクオリティは三部作でピカイチだ。直近で登った課題と比較すると、障子岩のラップと同じくらい面白かった。もしラップと同等の長さがあれば四つ星で確定していたと思う。
グレードは、たぶん5.12bで適正だと思う。2~3年前は2撃できる限界グレードが5.12aだったが、このところ自分の考える5.12bが2撃できることが増えてきており、成長していると思いたい。一方、ウッシーⅡのような名課題でない限り、2撃してしまうのはもったいないとも思うので、今後5.11d~5.12bあたりのグレードはオンサイト用に温存するべきか。