29 奥武蔵北川
KITAGAWA
※注意:以下の但し書きをご理解の上、お読みください。
(1)グレードについて、個人的感覚により調整しています。性別、身長、リーチによって体感グレードは変わりますが、個人的なブログとしてご容赦いただいた上でご覧ください。なお、グレーディングの基準について、コラム11「グレード解析工房」で説明しています。
(2)星について、100岩では4つ星までついてますが、これもまた個人的感覚により、5つ星までつけています。星の基準については、「00 表記の読み方」で説明しています。グレードに対してこちらは、そこまでの批判は生じないでしょうが、やはり苦労して登った課題の星が下がっている場合があるかと思いますので、よくご理解の上、ご覧ください。
思い出
天井を覆いかぶさるような巨大なハングが売りのチャートの岩場。初めて来た時、100岩場で中級レベルの岩場と紹介されているのが信じがたく、フリークライミングの無限の可能性を感じた。
アクセス
西吾野駅から徒歩30分。車の場合は最大でも4台程度。他にも駐車できるようなスペースはあるが、地域の方々が利用している場合もあり、当然だが停めてはならない。さらに、これもまた当然だが道路にはみ出るようなことはあってはならない(2019年5月18日、地主の方に注意を受けた。)。駐車料金としてお賽銭を払う。岩場の木に利用案内が貼ってあるので確認しよう。火気厳禁。
トイレ
近隣の元学校の公衆トイレを利用できる。かなりキレイでよく手入れもされているので、利用する際はお賽銭等で地域に何らかの還元をするとよいと思う。
①桧フェイス左(5.8)
2018/04/14 1便OS
2ピン目までが核心。左寄りに登ると手ごろなホールドが見つかるだろう。上部は棚がある。
②桧フェイス右(5.7)
2018/04/14 1便OS
棚が3段くらいあって易しい。
③もうすぐ七夕(5.8)
2018/04/14 1便OS
1ピン目が遠いので気をつけよう。
④天の川(5.10b)
2018/04/14 2便RP
1ピン目が遠く、手前のハーケンにヌン掛けする人が多い。2段目のハング越えのライン取りがわかりづらい。下部、中間部に核心があり星をつけようか悩んだが、中間部のライン取りがしっくりこないので星はつけないままにする。なお、1ピン目、3ピン目のヌン掛けがカチカチで、アップにはあまり勧められない。
以下ムーブメモ
右のガバをとってから若干左寄りに登ると適したホールドを見つけられた。
⑤茶摘み唄(5.10c)☆
2018/04/14 3便RP
ガバの薄被り壁。同じような強度のムーブが続き、上に行くほど難しくなり面白い。
以下ムーブメモ
最後のハングは左に巻き気味に登った。左手を引っかけるとジャミングみたいになった。直上しようと思えば直上できる。アンダーを使ってのハング越えでムーブを感じるが、若干無理があるので、左に巻くのが自然だと思う。右から登るのは自然でない。
⑥名無しのゴンちゃん(5.11d→5.11b)★★→☆
2018/10/21 2日6便RP
どのトポにも書いてあるが、ハング越えの4ピン目のクリップが厳しい。⑤を登って、長ヌンチャクをさらに連結してセットすると普通にクリップできるが…。ハング越えは右に逃げることができる。右に逃げれば5.11bくらい。それでも結構パンプしてしまい、最終クリップ後は5.8くらいのフェースだがホールドがわかりづらく、難しく感じた。直登を目指すよりは⑪を先に取りついた方がよいと思う。星2つでもよいが、右に逃げられるので1つ減らした。
以下ムーブメモ
2~4ピン目までは全てアンダーで保持してクリップすると容易い(4ピン目は連結ヌンチャクをセットした場合に限る。)。
⑦謙譲の美徳(5.11a)★★
2018/05/04 3日7便MRP
ハングを避けていくラインだが、それでも十分に傾斜がありパンプする。下部はチャートっぽいカチ持ちができず、中間部にたどり着くまで一苦労だ。核心部のホールドは無数にあるが使えるものは少なく、リーチがないとグレードが変わってしまうと思う。ハングを越えた後、体を捻ると急に垂壁に変わり体が軽くなるのが不思議。越えた後が5.9くらいのフェース。ランナウトしておりかつ高度もあるので、桧フェイス左(5.8)より難しく感じる。
以下ムーブメモ
3ピン目は右手のハンドジャムをきめながらクリップができる。核心のハング越え(6級)は左手アンダーからの右手クロスで逆手のフィンガージャムのように引っかけ、左手をカチで中継して大カチを保持する。最後は終了点の前のボルトでクリップすると安心。
⑧バトル(5.12a)★♂
2日9便×
下部は一応⑦、⑨とは独立したラインを引くことができる(5.8)。上部は一手モノのボルダー課題だが、特徴的なムーブがある。核心ホールドは持ち方を調査研究しがいのある形状で、いかにも外岩らしい課題といえる。核心後は左に抜けて⑦謙譲の美徳に合流するが、合流するに至るまでもムーブがあり、最後まで飽きさせない。
北川の岩場は、どの課題も持久系から瞬発系まで、ひと癖もふた癖もある課題ばかりで、通いがいのある、素晴らしい岩場だと思う。瞬発系課題はバトルのような1手モノ(2級)からUVのようなレジスタンス系(4級が3連続)、秋葉大権現のようなボルダームーブ(3級)からの持久系まで本当に多彩で飽きさせない。だが持久系課題も全く負けていない。5.12aの登竜門、自然で合理的なラインを堪能できる北落師門(ボルト10本!)、そして最後に待ち受ける、限定課題ながらその印象を覆すほど魅力に溢れた錦ヶ浦(ボルト10本かつ8つのボルダームーブ!)。北川は私に、フリークライミングとは何か、フリークライミングの面白さとは何たるかについて教えてくれた。関東のクライマーは北川に鍛えられ、そして更なる高みを求めて巣立っていくのである。最後に100岩場から、印象に残ったフレーズを引用したい。「北川の大ハングは、色褪せることなく、訪れるクライマーを迎えてくれる。」
以下ムーブメモ
右手ガバアンダーでクリップ、左手ガバ、左足をあげて左手ガバカチ(薬指でジャム、指3本を深くねじ込んでしっかりカチ持ちできるが、向きが進行方向ではない。)、右足を下段最上部の突起(ガバホールド)にあげて右手カチアンダー(3ツ星のアンダー。5本全ての指でホールド可能。)。左足をスメア気味に上段ハング帯に乗せて、右足をガバアンダー(左寄り、かなり深くかかる)にトゥーフックして大デッド(3手、2級)。右手縦ホールド、右足キョンで上部の顕著な縦ホールドにデッド、左足キョンで左側のガバにデッド(2手、6級)。クリップ。上部のホールド地帯の中にある横ガバカチに右手、右足キョンで左側のガバを保持。⑦に合流。
⑧’バトル&ピース(5.12b/c)☆☆
2024/05/13 3便RP
バトルの核心から謙譲の美徳にリンクするのがバトル、そのままハングを突き上げるのがバトル&ピースである。秋葉よりは難しく、錦よりは簡単に感じたので、5.12b/cで妥当だと思う(初登者も同じ理屈でグレーディングしている気がする。)。自分の体感だと、バトル部分が2級、ピース部分が4級に感じた。城山のオレゴン魂と同じような課題構成だと思う。RP時は強くなりすぎてクリップは普通(簡単ではない)に感じたが、限界グレードだと核心からのクリップで全体力を消耗、そこから傾斜を食らいつつ5~6手こなすのが大変そうだ。2つ星の価値は十分あると思う。なお、ホールドはまだ安定しておらず、しばらく欠損が続くと思われる。
備考:
今まで、地面に降りるまでは1便でカウントしていたが、アンクリップしてクライムダウンしてトライしてみると、完全に2トライ目の様相を呈してしまったので、今後は2つ以上アンクリップしてクライムダウンした場合は、2トライ目のカウントを取ることにする。
⑨雨宿り(5.10b→5.8)
2018/04/30 1便OS
左から登ると5.8くらい。ハーケンが打ってあるポケットを限定すれば直上ルートになるが、ホールドが悪いのに加えスタンスも悪く、5.10cはあると思う。直上した場合でも結局は左よりに合流することになるため、直上するラインを引くこともできず、あまり登攀欲は湧かなかった。
⑩UV(5.12a)★★☆♂
2019/05/18 4日9便RP
初めて北川に来た1年前、先輩クライマーが取り組んでいたラインで、大迫力に圧倒され自分が取り組んでいた北落師門と同じグレードとは到底思えなかった。半年後の秋、二子山が混みすぎたため北川に訪れ、試しにトライしてみたが、やはり相当に悪く、かなりの体幹が必要だと感じた。思えば、それからの半年間で行った懸垂ボードのフロントレバー(いまだに1秒もできないが)のトレーニングなどは、UVのために努力してきたといって過言でない。クライミング人生で初めてシーズンをまたいで取り組んだ課題で、登れた時も登れる自信は確かにあったのだが、それでもなんだか信じられない気持ちになった。ちょうど⑯秋葉大権現(5.12b)と同時進行でトライしており、その時に全てのホールドがUVは半年前に比べて体感で3倍、秋葉はホールドが存在しないように見えたがガバカチだと思えるくらいで、成長を実感しながらトライできた。
以下ムーブメモ
さて、核心部のボルダーグレードについてだが、これは3つの4級セクションに分かれていると思う。1つ目(4級)は右にトラバースしてカチを中継してガバを取りいくところ。右にトラバースする際、私のリーチでは左手アンダー→右手ガバ(クリップ)→左手アンダーカチ→右手アンダーガバと4手で済んでしまい、だいぶ力を温存できた。2つ目(4級)はガバでクリップ(非常に消耗するのでヌンチャク連結にした)してからサイドガバを右、左、右と掴みリップ直下のカチを左手で保持するところ。サイドガバのセクションは、スタンスを変えずにそれぞれキョンにすることで足数を省略できた。3つ目(4級)はリップ直下のカチからリップ右側の甘いホールドを右手で保持し、少し上にある不自然なホールドを左手で保持し、遠くにあるちゃんとしたガバを右手(クリップ)、真上のカチを左手、右にあるガバを右手で掴んでマントリングするところ。マントルのグレードとしては4級だが、クリップはリップの先のガバでしかできないため、それで区切ると4級→3級→6級となる。また、下部がアプローチに感じてしまうが、リップの先でクリップ、またはクリップを飛ばしてマントリングしてフォールした場合、下部1~3mまで落下するため、ランナウトを楽しむためにはむしろ必須要素となる。見た目よりずいぶん傾斜がきついため、ロープを流しておけば頭から落下しても壁にぶつかる可能性は低いと思う。ランナウト精神を鍛えよう。
⑪北落師門(5.12a→5.11c)★★★☆
2018/05/27 5日15便RP
外岩で初めて打ち込んだ課題。個人的な意見だが、課題は5日かけて完登するのが一番充実すると思う。1日目はトップアウトすらできず、2日目でムーブを解決しトップアウト、3日目で各パートのムーブを洗練させ、4日目でワンテン、5日目で完登。4日目あたりで脳内RPをしているとき、これは「夢」じゃないんだ、と思った。普通何かを妄想するとき、決まって実現不可能なことばかりだ。けれど、これは「夢」じゃない。うまくいくかもしれない、うまくいかないかもしれない、けれどもそこに「可能性がある」ということが、クライミングにおける一番の素晴らしさだと思う。
以下ムーブメモ
ルートの内容は前半のフェース(5.10c)と後半のハング(5.11b)に大きく大別できる。前半のフェース(5.10c)は、まず右足を踏んで右上方の大カチを保持して左足に踏みかえる。足をあげたら、右側にあるガバカンテは無視して、上方にあるクラックの縦カチを左手で引っかけて側対で体を起こす。左側にあるガバ、右側にある縦ホールドを掴み、ステミングで真上のピンチを保持。右側の斜めアンダーを保持して左足を踏み込んで側対で真上のガバを保持。後は道なりに進みノーハンドレスト。後半のハング(5.11c)は、ガバが連続するものの距離が遠く、デッドを多用したムーブが続く。縦っ飛び(6級)からの横っ飛びのデッド(6級)は爽快だ。横っ飛びのデッドは思いっきり側対にして左足を穴に突っ込むと勝手に振られ止めになる。フィジカルが足りないクライマーにおすすめ。どっ被りのレストポイント(といっても被りすぎてあまり休めないが)で呼吸を整えたら、最後のセクションに突入する。ハング越えの前にヒールフックを決められるか。ヒールをきめた状態で最終クリップできると腕の張りを抑えられる。ハングを頑張って越えた後は2手カチが続き、そこでマントリングできるかが核心(6級)。細かいフェースからノーハンドレストを挟んでパワフルなハング、特徴的なムーブの後に核心が最後に待っているというストーリー性に星4つをつけたい。北落師門は、夢を現実にしてくれる素晴らしい課題である。
追記:
実に6年振りの再登。下部はミンボー、上部のレストガバまでのワンムーブは錦ヶ浦でトライしていたが、それにしても4~5年振りのトライということになる。結論から言うと、やはり下部は5.10c、上部は5.11b~cで5.11cだと思った。下部のムーブの難易度や、上部の距離出しの感覚は当時と変わっておらず、簡単になるわけでも難しくなるわけでもないのが不思議に感じた。なお、最後のリップ手前のガバが崩壊しており、ガバとガバの距離が少し遠くなった気がした。打ち込んだ課題は多数あり、何ならもっと日数と便数を出している課題もあるが、初めて打ち込んだ課題の記憶は強烈に残っているようで、アルツハイマーオンサイトを狙っていたが、ただの再登だった。この5.11cというグレードは、完登時は当然5.12aだと妄信していたわけで、その後に完登した課題との難易度の差、完登したクライマーのコメントやネットの記録から推定したわけだが、今日その答え合わせができてよかった。クライミングは自己満足のスポーツなので、体感グレードを調整することは重要だと思う。そもそも、ホールドの欠損や(考えたくないが)チッピングによる変化はある、ない方がおかしいわけで、そうなると初登者へのリスペクト云々以前に、グレードも変化し続けて当然である。一方で、日本100岩場など、自分が権威を感じている冊子におけるグレード表記というのもまた、特別なものである。クライミングがいかに自己満足とはいえ、「私の初5.12は○○です。ただし、トポには5.11dと書いてあります」とか言ってしまったら収拾がつかないし、意味がわからない。対外的には、北落師門はこれからも私の生涯初5.12となり続けるし、北落師門で初5.12が登れて本当に良かったと思う。
⑫ミンボー(5.12a→5.11c)★☆
2018/10/17 2日7便RP
途中までは北落師門と同様。バリエーションのように見えるが途中から完全に分岐するので別個の課題として扱ってよいように思う。平行線上のカチ2つから一手が悪い。悪い一手の先はガバが上下に平行で2つずつある。身長170㎝あればデカい棚に足をつけたまま、核心の一手もその先のガバも手が届くので、単なる正対登りとなる(体感4級)。最後の乗越しも雑に解決できる。北落師門と比べて星2つで妥当か。今回、北落の半分以下の日数と便数でRPすることができ、成長を感じられて嬉しかった。ちなみに初登者によると、まず⑮から登り中ほど左に打たれているボルトを使ってミンボーへ直上するのが本当のラインのようだが、現在はそのボルト自体使われておらず、チョーク跡も見当たらない(ボルトは新しそうに見えた。)。
備考:
ミンボーには2ツ星のインカットガバカチがある。
⑫’ルンルン・ミンボー(5.12a→5.12b)☆☆
2024/05/18 2便RP
ルンルン・ヒロシ君から謎のボルトを使ってミンボーまで直登する。ルート整理の際に消滅した課題で、これが本当のミンボーらしい(これを課題として認めると、さらなるアミダクジを引き起こしてしまうので、北落とスタートが同じになったようだ。)。ヒロシパートで5.12a、ミンボーパートで5.11cで5.12bに感じた。ミンボーは核心のガバが濡れており、乾いていれば5.11bくらいだと思う。ヒロシもかなり雑に登ってしまったので、正確なグレードは分からない。ただ、全体として5.12aでは収まらないと思う。左右のルートと比較して特筆すべきは、レストポイントである。北楽はノーハンド、錦はノーハンドではないが超ガバで傾斜も落ち着いている。ミンボーはガバだが傾斜があり、3つの課題の中では最も課題の連続性を感じる。北落からミンボーの核心に突入すると、いきなりボルダリングが始まった感があるが、ヒロシからミンボーにリンクすると、ミンボーが完全に核心の一つとしてクライマーを落としにかかってくる。下部核心との難度の差もちょうどよく、課題の完成度は北落に次ぐレベルだと思う。しかし、錦と同様に限定感があり、普通に登れば北落のレストに到達してしまうと思う(そうするとヒロシからの北落レストからのミンボーのラインもできてしまい収拾不能)ので、3つ星から一つ減らして2つ星とする。
以下ムーブメモ
3級+5級(?)+5級(?)+6級+4級=5.12b
⑬グリーン・オニオン(5.11a/b)
2019/05/07 1便RP
トラバースしすぎて⑯まで行ってしまった。ここまで来ると⑯のラインで抜けた方が自然なので、ややジグザクとしたラインになってしまった。ただし、⑯までトラバースするには若干のダウンクライムと若干のデッドが必要となり、ガバであることを知らないと仮定すると、そこまで行かずに直上に移ると思うので、もしかしたら自然なラインなのかもしれない。その場合、レストポイントから終了点までわずか2ピンしかないルートとなり、下部はあまり被っていないのでこのグレードにしては危険性が高いといえる。抜け口が核心で、かなりパツパツだった(6級)。グリーン大権現が5.10d、グリーン・オニオンから秋葉ヒロシ君へのリンクが5.11aだと思う。秋葉ヒロシ君はハンドジャムが効くポイントがあって助かった。グリーン・オニオンはそれがなく、ガバ2つを掴んで足を上げ左手をアンダーに切り替え、体を強引に起こす。トポに記載の通り5.11a/bか。いずれにせよ、取り組む価値は感じなかった。
⑭錦ヶ浦(5.12c)★★★
2019/12/01 5日20便RP
例えば、グレード更新を懸けるに相応しい課題があるとしたら、それはどのような課題だろうか。日本のグレード体系に合致した、甘くも辛くもない課題。十分に長さがあり、持久力、瞬発力ともに高い能力が要求される課題。見映えがして、いかにも登攀欲がそそられる、クライマー冥利に尽きる課題。クライマーそれぞれのスタイルや思想、思いがあるなか、この錦ヶ浦はどの面から見ても、グレード更新を懸けるに相応しい、素晴らしい課題だと思う。取り組むまでは限定課題だと思っていたが、北川ハングの最も象徴的な、見映えのする三角形のど真ん中を突き上げるムーブに思わず、「面白い!」と思ってしまった。解説すると、三角形の左端がミンボー、右側が北落師門のラインとなるわけだが、通常無理に直上しようとすると左右どちらかのラインに寄ってしまいがちで、そううまくラインを引くことはできない。だが、この錦ヶ浦は、三角形までのラインも真っ直ぐに引くことができ、かつ三角形の中央カンテ左奥と右奥にそれぞれガバが用意されており、それらを利用することで、北落師門と独立した、錦ヶ浦独自のラインを引くことができるのだ(北落師門(6級)と錦ヶ浦(5級)の間はかなり悪く(3~4級)、ホールドがまばらでラインが取りづらい上に仮終了点が設置されていて邪魔くさい。)。さらに、そのムーブがとても気持ちよく、見ても登っても楽しい課題を演出している。
今回グレードを更新するにあたり、いつもは順調に進んでおり、また1便目の感触でイケるかどうかある程度わかるものだったが、今回は「これは無理かもしれない」と思ってしまった。グレードが1年間更新できていないこともあり、どうしても更新したくて取りついたが、下部のあまりにも高い強度と、下部でテンションをかけても上部の持久系セクションの途中で力が尽きてしまう現実にぶち当たり、モチベーションも低下してしまった。結果的には、前回2テンからのRPを達成でき、こんなに進みがあることは初めてでびっくりしたが、最後まで諦めなかったことが成功につながったのだと思う。「無理かもしれない」と思ったのは3日目のことだったが、最低でも10日、いや20日、30日とトライを重ね、「諦めずに頑張る」ことがクライマーとして一番重要なことだと思う。
以下ムーブメモ
出だし左手デッド。右足をあげて、右手でホールドを飛ばしながら右側のガバへ。左足をスタートの左手ホールドに移し、逆V字ホールドに左手マッチ。左足ヒールでクリップ(レストする余裕がないので、左足ヒールをかけるときに左手に力を込め、右手を節約する。)。両足ステミングでゴミカチへ左手パツパツデッド。薄すぎるスタンスに右足を乗せて、左足を顕著なスタンスよりも右側のスタンス(ゴミカチの真下寄りで外傾していないスタンス)に乗り込み、右足フラッキングでガバカチへ右手デッド(2手の3級)。右側の外傾していない独立した大きなスタンスに右足を乗せる。クリップ。上部のカチを左手で保持(左下側ではなく、右上側の、2つを比較すると持ちにくい方のカチ。左寄りにホールディングする。親指で抑え込める。)。縦カチに右手デッド(左足にトゥーフックがかかり、勝手に振られ止めになる。)。左足キョンで、横カチにデッド。3級核心のゴミカチに左足を乗せ、右手ガストン(ホールドの右よりの方がカミング効果もあってかかりがよい。)。右足を縦スタンスにスメアして、左足を3級核心のガバカチに乗せてクリップ(クリップを含めて4手の5級。なお、ヌンチャクは長ヌンではなく通常のヌンチャクにするとロープがホールドと干渉しにくい。)。さらに右側の独立したカチで右手ガストン。左手をクリップに使ったガストンへ飛ばして、カチアンダーの横カチ部分へ右手デッド、縦アンダー部分に左手マッチ(うまくきまれば指が3本入るが、2本でも問題なし。)。一度右足をあげ、体を起こし、真下のスタンスに右足を乗せる。上部の持ちにくいアンダーを右手アンダーガストン持ちして、両足をステミングでさらに上部の持ちやすいガバアンダー地帯を左手で保持(親指で抑え込める)。クリップ(4ピン目クリップからここまでで7手の5級)。足位置を調整して、ガバへ左手デッド。右足をあげて、カチを中継してリップへ右手デッド、飛ばして超ガバへデッド(4手の6級)。左足を上げてレスト体勢に入る。上部はまず右足キョンでルンルン・ヒロシ君側のガバを右手で保持(顕著なアンダーはどんなムーブでも疲れるので無視)して、足を上げてハング上のガバを左手で保持、右足をレストのガバ地帯に突っ込み、右手クロスで左上のガバを保持。さらに両足をあげて左足キョンで上部のガバ棚地帯(右端、親指で抑え込める)へデッド(全部で5手の5級)。右手、左手でドガバを保持。右足ヒールでクリップ(ランナウト、1つ飛ばす。)。横っ跳びのデッド(1手の6級)で最終レストへ。左足ヒールでガバを左手、右手と保持。最後のレストポイントに足を乗せてリップ上のガバカチに右手デッド(1手の7級)。左足でヒールしながら最終クリップ。リップ左側のカチを保持。右足フラッキングでホールドを飛ばしながらカンテ左側奥のガバに左手デッド、右足をハング下のどこかに引っかけて、カンテでパンパン飛ばしながら最後のカンテ右側奥のガバに右手デッド(4手の5級)。マントルは落ち着いてやれば容易。下部5.12b(3級+5級+5級+6級)+上部5.11c(5級+6級+5級)=全体5.12c
※星について、4つ星クラスの課題だと思うが、結局は限定課題であること、どこまで限定するかクライマーによって異なり(右側のルンルンヒロシ側のガバを使うか、左側の北落師門とミンボーの分岐共有ガバを使うか)、課題の面白さを共有しにくいこと、三角形の左奥ガバホールドが初見では全く見えず、気付かないと仮終了点の辺りから登ってしまうことから、星は3つのままにする。
⑮ルンルン・ヒロシ君(5.12a→5.12b)★
1日3便×
内容的には星2つだが、錦ヶ浦の存在により価値が低くなり、トライされにくくなってしまっているため、星1つのままにする。
⑯秋葉大権現(5.12b)★★★→☆☆
2019/05/11 5日17便RP
出だしが難しすぎて絶望した課題。2日目は便数を重ねるごとに高度を上げることができ、最終便では最後の核心まで進みワンテンに持ちこむことができた。こんなに順調にいくことは稀で、ムーブがわかってしまえば出来てしまう系だと思ったが、そこからが長く、最高日数は更新しなかったものの便数は過去最多となってしまった。原因は2日目と3日目(RP狙い)の間を中1日にしたことで、無謀だった。限界グレードだったのでもう少し謙虚になるべきだと思ったが、RP当日は中4日空けており、全てのムーブをかなりの余裕を持ってこなせてしまったので、ギリギリのクライミングで達成感を得るには中2日がベストだったのかもしれない。
以下ムーブメモ
課題の内容はルーフ越え(3級)からの薄被りフェース(5.11b、6級→5級→6級)となる。ルーフ越えが見たまんまパワフルな上に、フェースも正対ムーブが連続し前腕をかなり消耗する(縦ホールドが使えそうだが持ち感が悪く、核心は全て横ホールドで処理することになる。)。ルーフ越え(3級)は右手のホールドをハイアンダーのように保持し、左足をジャミングしたら、リップ上のガバを左手でデッドする。右足をジャミングして右手をマッチし、左足を1つ上の棚に上げたら右手をクロス。左側の縦ガバを左手で保持し、ルーフの庇が突き出ているようなスタンス(上からは見えない)に左足を乗せ右足をフラッキングしたら、右手デッド(顕著な棚に右足を乗り込むのが主流のムーブのようだが、窮屈すぎてできなかった。)。2ピン目にクリップ。左手をかかりの浅いアンダーに差し込んだら、ガバにめがけて右手デッド(6級)。3ピン目にクリップ。側対で左上のカチを左手で保持し、三日月ホールドの横カチ部分を右手で保持したら、左手をカチで中継しながら左上のカチに送り、4ピン目にクリップ(全部で5級)。右手を右上のカチ群の真ん中にある横カチで保持し、ステミングで上部の大カチに右手デッド(6級)。左側のやや限定気味のホールドを左手で保持し、上部のガバを右手で保持したら、5ピン目にクリップ。ここで実質終了となる。最後の北川特有のルーフ越えは周辺の課題の中では最も容易(7級:マントルグレードランキングはUV(4級)→錦ヶ浦(5級)→北落師門(6級)→秋葉大権現(7級)となる。)で、せっかく7ピン目まであるのにこれは勿体ない。下部核心から中間部までの内容は非常に素晴らしいが、最後のメインディッシュのパンチが弱いため、1つ減らして星2つとする。
⑰張り子の虎(5.10b)☆
2019/04/29 1便MOS
ルーフ越えからのカンテを楽しむライン。ホールドはガバガバで、パワフルなクライミングを楽しめる。上部はカンテの右に逃げてしまいがちで、ランナウトするものの一気に単調なクライミングと化してしまう。カンテの左から登れば5.10dらしいが、特にチョーク跡はついていない。5.10bという低グレードにしてルーフ越えのムーブを味わえる希少性から星を一つつけた。⑯の出だしのムーブの強度が高く手首を痛めかけたので、⑰でアップをしてヌン掛けするとよいかもしれない。
⑱エントランス(5.6)
2019/05/03 1便MOS
適度にランナウトして緊張感のあるライン。下部が3次元的で、いかに5.6といえどもクライミングをやってない人には難しいと思う。⑮、⑯のヌン掛けに適している。ボルトも意外としっかりしている。